膀胱は、尿を一時的にためて排出するという重要な役割を担う臓器です。しかし、膀胱の働きや病気については、あまり日常的に注目されることが少ないかもしれません。この記事では、膀胱の基本的な役割から、膀胱がんの現状や治療法について詳しく解説します。健康の知識を深め、自分や家族の健康管理に役立てていただければ幸いです。
1. 膀胱の基本的な働き
膀胱は腎臓で作られた尿を一時的に蓄える袋状の臓器です。腎臓から尿管を通じて運ばれる尿を一時的にため、尿意を感じたときに排尿することで体内の老廃物を排出します。このプロセスを通じて体内の環境を一定に保つ役割を果たしています。
蓄積のメカニズム
膀胱は通常300~500ミリリットルの尿をためることができます。膀胱壁が伸びることで感覚神経が刺激され、尿意を感じる仕組みがあります。これにより、尿の蓄積と排出がコントロールされています。
排尿プロセス
尿意を感じた際、膀胱の筋肉が収縮し、尿道を閉じている括約筋が緩むことで尿が体外に排出されます。この一連の動きによって、体内の老廃物や余分な水分が効率的に排出され、健康な状態が保たれます。
2. 膀胱がんの現状と罹患率
膀胱がんは日本においても比較的よく見られるがんの一つです。国立がん研究センターのデータによると、2020年には23,185人が新たに膀胱がんと診断されており、男性が約17,424人、女性が約5,761人と、男性の方が多いことが特徴です。
罹患率の傾向
人口10万人あたりの罹患率は、男性で28.4例、女性で8.9例とされています。年齢を重ねることでリスクが増加することもわかっており、特に高齢者に多く見られるがんです。罹患率の背景には、生活習慣や喫煙などの影響が指摘されています。
5年生存率
膀胱がんと診断された患者の5年相対生存率は73.3%(男性76.5%、女性63.0%)で、がんの進行度や治療の適応によって異なります。
3. 膀胱がんの治療法
膀胱がんの治療はがんの進行度や患者の状態により異なりますが、主な治療法は以下のようになります。
手術療法
• 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)
初期の膀胱がんに用いられる手術で、尿道を通じて膀胱内の腫瘍を切除します。比較的侵襲の少ない治療法であり、入院期間も短いです。
• 膀胱全摘除術
進行した膀胱がんに対して膀胱を取り除く手術であり、尿路再建を行うことがあります。患者の状態に応じて術後のケアが重要です。
化学療法
抗がん剤を用いた治療で、膀胱内に直接注入する方法(膀胱内注入療法)や、全身に効果を及ぼす全身化学療法があります。再発防止や進行がんに用いられます。
免疫療法
BCG療法(結核菌を膀胱内に注入して免疫反応を引き起こす療法)は、再発予防や早期のがんに有効です。
放射線療法
進行がんや手術が困難な場合に行われることがあります。放射線を照射してがん細胞を破壊します。
4. 膀胱がん治療の費用と支援制度
膀胱がんの治療費は、治療法や入院期間によって異なります。健康保険が適用されるため、患者の自己負担は3割程度になります。また、高額療養費制度を利用することで、一定の医療費が上限を超えた場合に負担が軽減されます。
• 手術の費用例
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の場合、入院・手術費用は数十万円程度ですが、保険適用で負担が軽減されます。
• 化学療法の費用
回数や薬剤によりますが、数万円から数十万円程度がかかることがあります。がん保険や医療費控除などの制度を利用することも可能です。
まとめ
膀胱は体内の水分バランスを調整し、老廃物の排出を担う重要な器官です。膀胱がんについては、早期発見・早期治療が重要であり、さまざまな治療法が選択肢として用意されています。定期的な検診や日常生活の見直しを通じて、健康な膀胱を維持することが大切です。この記事を通じて、膀胱の働きや病気についての理解が深まれば幸いです。